
山崎ナオコーラ作『この世は二人組ではできあがらない』を読む。
タイトルに何か惹かれるもがあって手に取ったら、止まらなくなった。
散文的なコトバの連なりのなかの、短いセンテンスの向こう側に広々とした平原(あるいはポッカリとした空白)が開ける瞬間があって、ハッとしてしまうことしばしば。1978年生まれの、いわゆる“ロスジェネ世代”の主人公(女の子/あるいは作者自身?)の恋心と成長が切なくも温かく描かれていて、小気味よい文体とあいまってグイグイ読ませます。何気ないやりとりがなかなかに思索的でもあって、単なる恋愛小説にあらず(著者本人曰く、“素朴な社会派小説”だそう)。脳ミソにじんわりきて、ホロっと泣けもする良書。
人と人とは、関係がない。誰も誰かから必要となんてされていない。必要性がないのに、その人がそこにいるだけで嬉しくなってしまうのが、愛なのではないか。
遠くにいるときは心穏やかに「頑張れ」と思うもの。特に理由もなく「相手のために何かできないかしら」と考えてしまうものだ。
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